この仕事をしていると、本当にため息をつきたくなる場面が何度も訪れる。「毎回毎
回、同じ説明してないか? そろそろ頭に残らんか?」そんな心の叫びだ。特に数学。社
会などの暗記教科と違って、一度解法を身につけたらそんなに簡単に頭から抜けないと思
うのだが…。しばらく乗ってないからと言っても自転車に乗れるかの如く、本当に染みつ
いた感覚というのは簡単には消え去らないはずなのに…。
①例題を通じて“なぜそうなるのか”という理屈を説明する。
②演習を繰り返す。(その日のうちに間違い直しまでやって点検を受ける)
③家で復習する。(ここは個人差あり)
④チェックテストで復習状況の確認が入る。
⑤学伸テスト前、総復習プリントで再度演習する。
⑥学伸テストを受ける。
⑦数字を差し替えた再テストVerで演習を重ねる。
⑧定期テスト対策授業で更なる演習を重ねる。
ざっと流れを書き出すだけでも、かなりのパターン練習を重ねていることになる。ここ
まで頭に刷り込むための流れを作っていても定着していないとなると、やはり「直し」に
問題を抱えているということになる。頭が良いか悪いかという次元ではなく、間違えた問
題に対する“捉え方”と“意識”の問題ということだ。一番マズいのは解説を丸ごと暗記してし
まうこと。意味付けで覚えようとしていないのだから、その場限りの短期記憶となってし
まい、数日後には脳内のネットワークから情報を辿る道筋が消去される。結果、これを繰
り返してきた生徒たちは復習内容が出るたびに同じタイプの問題が解けず、毎回苦しむこ
ととなる。「それじゃぁ何度やっても結果は変わらない」という残念な状況を自ら作りだ
してしまっているのだ。
成長するにつれて、人は意味付けで物事を覚えるようになる。そうして脳内の記憶のネ
ットワークを通じて、覚えた情報が引っぱり出せるようにとっかかりをつくるのだ。そし
て繰り返せば繰り返すほど強固なネットワークを形成し、より忘れにくくなるという仕組
みを持つ。この作業を行うことが復習なのだ。この2つをしっかりと押さえておけば、暗
記は劇的に改善されると思う。
すぐに習ったことを忘れてしまう生徒は、意味付けで覚えようとしないために記憶を辿
るとっかかりを創ることもできず、日々の復習も怠るためにネットワークの形成も芳しく
ないため、結果として頭の中が常にリセットされた状態に戻ってしまうのだ。その場その
場は覚えることもできるし、演習も重ねているのだから、“捉え方”と“意識”を変えることで
状況の改善はできるハズなのだが…。この部分は本人次第でしか変えられないので、何と
ももどかしいところだが、我々講師としては口酸っぱく訴え続けるしかないんだよな…。